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[読書日記]空気を読む脳☆☆☆

空気を読む脳 (講談社+α新書)

空気を読む脳 (講談社+α新書)

  • 作者:中野信子
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: Kindle版

家族が借りてきた本。中野さんの本は個人的に「アタリ」が多いので、私も読ませてもらいました。
タイトルからイメージした内容とはちょっと違いましたが、中身のぎっしり詰まった本でした。


  • ポイント1 日本人の幸福度が低い理由
  • ポイント2 オキシトシンには裏がある
  • ポイント3 褒めるな危険



◆本の目次◆
はじめに 
第1章 犯人は脳の中にいる ~空気が人生に与える影響とは?
第2章 容姿や性へのペナルティ ~呪いに縛られない生き方
第3章「褒める」は危険 ~日本人の才能を伸ばす方法とは?
第4章「幸福度が低い」わけがある~脳の多様すぎる生存戦略
おわりに

こんな本です

目次を見ていただければわかりますが、内容は案外バラバラです。
というのも、この本はWebメディア「現代ビジネス」の連載「日本人の脳に迫る」に加筆修正したものだから。
gendai.ismedia.jp

連載を本にしたものなので、その時々の事象と脳の働きを絡めた内容。その分タイムリーで興味も湧きます。

ポイント1 日本人の幸福度が低い理由

日本人の脳にあるセロトニントランスポーター(セロトニン再取り込みを担うたんぱく質)の量は、世界でも一番少ない。
その理由は、量を少なく産生するSS型という遺伝子型を持つ人の割合が日本に多いから。

どちらかといえば悲観的になりやすく、真面目で慎重であり、粘り強い人たちであることを示す遺伝的性質(P191)



メンタリストDaiGoさんの本『倒れない計画術 まずは挫折・失敗・サボりを計画せよ!』にもありましたね。
「防衛的ペシミスト」と称した日本人の気質について言及しています。
book.yasuko659.com


↓こちらの記事がわかりやすくまとめてあるので、興味のある方はどうぞ
news.livedoor.com


幸福度がもともと高くなりにくい性質を持つ人が多くを占める日本で、無理して幸福度を上げようとするのはバランスを崩し、逆に不利益になる可能性もある、と中野さんは書いています。


しかも、この「幸福度が高くなりにくい」=「悲観的な傾向」が実はプラスかも?という記述があります。


長寿につながる因子は何なのかを調べたスタンフォード大学の調査によると、長寿者には共通する「性格」が見つかりました。

良心的で、慎重であり、注意深く、調子に乗らない。いわば真面目で悲観的な性格を持っていることが、長寿との相関関係が高かった(P191)

陽気で楽観的な人ほど長生きしそうに思いますが、実は逆!だというのです。


ところで、この性格。どこかで見た気がしませんか。
そうです。「セロトニントランスサポーターSS型という遺伝子型を持つ人」の説明とほぼ同じ。


日本が長寿国なのは、リスクを見極めて回避する能力が高い、この遺伝子によるものではないか。
そう考えれば、「悲観的」なのも悪くない気がします。

むしろ、同じ性質でも評価のしかたでこんなに変わってしまう、ということが衝撃でした。

ポイント2 オキシトシンには裏がある

こちらも衝撃的な話。オキシトシンは「幸せホルモン」「癒やしのホルモン」などと言われますが、実は「愛と憎しみのホルモン」だというのです。

オキシトシンが増えると「妬み」「憎しみ」の感情も同時に強まってしまうのだそう。「かわいさ余って憎さ百倍」がまさしくこれ。

「子どもに逸脱を許さない」「子どもが好き勝手やることは認めない」といういわゆる毒親の考えも、オキシトシンによるものだそうです。


さらに、「集団の結束」にもオキシトシンは働きます。

集団の結束を高める結果、共同体のルールを守らないものに対してバッシングが強くなる。

日本で、ルールを少しでも逸脱した人がバッシングを受けてしまうという現象が相次いでいますが、根底には、セロトニントランスポーターが少ない、という脳の生理的なしくみが関している可能性(P38)

よく見かける「不倫バッシング」もこの結果とも言えます。

実は、バッシングをする人は社会性の高い、人間的な人たちが多いそうです。
意外な気もしますが、「社会のルールを守る誠実で善良な人ほど、逸脱者への攻撃に熱心になる傾向がある」という研究が複数あるのだとか。


「自分の属する組織を守るため」という正義感が暴走した結果、バッシングになってしまうのかもしれません。

ポイント3 褒めるな危険

これができたら○○を買ってあげる、とかテストでいい成績を収めたらお小遣いを値上げする、などと言ってしまいがち。

ですが、子どもは「ごほうび」を約束した方が楽しさを感じなくなり、熱心さが薄れるというのです。

「大人が子どもに『ごほうび』の話をするときは、必ず『嫌なこと』をさせるときだ」というスキーマ(構造)をそれまでの経験の中から学習してきており(中略)報酬そのものの存在がタスクを嫌なこととして認知させてしまう要因になる(P138)

やる気にさせるのは、ツイッターにも書きましたが「仕事自体に『やりがい』があり、素晴らしいものだと伝えつづける」こと。

もともと、仕事内容が嫌なものであることが明らかな場合は、「あなたのような人でなければできない仕事です」などの心理的報酬、つまり承認欲求を満たす仕事を上手に使うのが効果的だといいます。


大人でも高い報酬を提示されれば「高い報酬をもらえるからには、この仕事はきつい、嫌な仕事に違いない」と考え、楽しさが激減してしまう。

逆に、低い報酬を提示されると認知的不協和が生じ、「わずかな金額で自分が一生懸命になっているということは、この課題は楽しい課題に違いない」と自分で言い聞かせるようになったと考えられます。

つまり、脳がそんな風に判断してしまうんですね。

ただし、ブラック企業にこき使われている人はこの心理をうまく利用されている可能性があるので注意が必要。


また、報酬の必要性は仕事の内容によっても変わるそうです。
創造性を上げたいときに報酬を与えてはいけない。むしろ、やりがいを与えた方が創造性が高くなる。
創造性やひらめきが必要ない、単純作業の場合は外的動機づけ、つまり報酬があった方が成果が上がります。


褒める時はただ「すごいね」「頭がいいね」と褒めるのではなく、「努力の甲斐があったね」などと、がんばったことに対して的確に褒めれば、もっとがんばろう、と思えるようになるそうです。

まとめ

タイトルに違和感あり。「空気を読む」ことが知りたくて読むと、ちょっとガッカリするかもしれません。

正しいタイトルをつけるとしたら、「“日本人らしさ”と脳」といった感じでしょうか。
日本人特有の気質を脳から分析すると…という内容です。


タイトルのことを除けば、下手な専門書より大変わかりやすい内容です。

たとえば、なぜ「褒めて育てる」がダメなのか。『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』を読んでもよくわかりませんでした。
ところが、この本を読むと非常にクリアにわかります。

ただし、脳科学のリテラシーがまったくないとちょっと読みにくいかも。


「おわりに」は著者自身の人生を振り返るような内容で、ぐっと来ます。これが自伝的内容の『ペルソナ 脳に潜む闇 (講談社現代新書)』に続くのかもしれません。
脳の話が好きな人にはとても楽しく読める本。興味のある方は読んでみてください。


私のアクション:PCのロック画面をプライミング効果*1のあるものに変える♪
■レベル:破 




※この本のメモはありません

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*1:見たものに無意識に影響されるので、PCの壁紙は効果的。片づけたいので理想の部屋の写真に変えました